栄養学の考え方を変えさせた実験
The Journal of Nutrition Vol. 127 No. 5 May 1997, pp. 1017S-1053S
Copyright ©1997 by the American Society for Nutritional Sciences
Experiments That Changed Nutritional Thinking
Kenneth J. Carpenter, Alfred E. Harper, and Robert E. Olson
Department of Nutritional Sciences, University of California, Berkeley, CA; University of Wisconsin, Madison, WI; and University of South Florida, Tampa, FL
飼料 (chaffed hay) | 肝臓 Cuの増加2 | 血液 Mo 濃度3 |
mg | mcg/100 mL | |
アルファルファ | 9 | 48 |
アルファルファ 3:燕麦 1 | 19 | 96 |
アルファルファ 1:燕麦 1 | 35 | 180 |
アルファルファ 1:燕麦 3 | 70 | 378 |
燕麦 | 113 | 447 |
1 Dick (1952)より; n = グループあたり6 匹 | ||
2 全肝臓銅の増加は初期値(推測)と屠殺時の値の差;初期値は約27 mg. | ||
3 数値はこの期間に採取した毎週の血液サンプルの平均である |
このシリーズの次の論文(Dick 1953a)は、無機硫酸が血液モリブデンを低下させるアルファルファの成分であることを決定した。Dick (1953a)はアルファルファの水抽出物に硫酸イオンを多く含み、抽出液はアルファルファそのものと同じモリブデン濃度低下作用があることを、認めた。図1に要約した結果は燕麦飼料を与え、1日あたり10mgのモリブデンをサプレメントしたヒツジに、硫酸カリウムを投与すると、血液モリブデンが低下することを示している。血液モリブデンの低下は腎からのモリブデン排泄の増加の結果であり、これは尿量とは無関係であった。この実験および関連した実験はMo-S相互作用を確立した。 図 1 モリブデンの血液濃度(mcg/100 mL)および尿排泄量(mg/d)に及ぼす硫酸カリウム1回経口摂取量の影響。ヒツジは燕麦飼料で飼育し、毎日モリブデン10mgをモリブデン酸アンモニウムとして呑ませた。採血と採尿は7日間行い、硫酸の摂取は矢印で示した。Dick (1953a)の図 4から。 |
乾燥飼料 | 銅摂取2 | モリブデン摂取 | 硫酸塩摂取 | Δ肝臓銅2 |
mg/d | g/d | mg | ||
燕麦 | 10.0 | 0.3 | ― | +5.4 |
燕麦 | 10.0 | 10.3 | ― | +40 |
アルファルファ | 9.8 | 0.5 | ― | +20 |
アルファルファ | 9.8 | 10.5 | ― | -12 |
燕麦 | 9.9 | 0.5 | 2.2 & 4.43 | +15 |
燕麦 | 9.9 | 10.7 | 2.2 & 4.4 | -20 |
アルファルファ | 10.1 | 0.7 | 2.2 & 4.4 | +39 |
アルファルファ | 10.1 | 11.1 | 2.2 & 4.4 | -18 |
1 Dick (1953b)の表3と表5より | ||||
2 82日と114日の間における全銅の変化;バイオプシーで得た0日の平均値はそれぞれ52および64mgであった。 | ||||
3 硫酸2.2gと4.4gをカリウム塩として与えた効果は同じであったので、データは結合した。 |
餌にモリブデンと硫酸を添加したときに肝臓銅蓄積の減少は観察されたにもかかわらず、表 3のデータが示すように血液銅濃度は上昇した。血液銅濃度はモリブデンと硫酸レベルが上昇すると上昇し、相互作用の存在が見られた。血液銅濃度が上昇しても、銅は生物機能には利用できなかった。大量のモリブデンと硫酸、および見かけ上は適当な銅で飼ったヒツジは、血液銅が正常または正常以上であっても、銅不足の症状が見られた。毛に縮れが失われ、肝臓銅濃度が低下した。モリブデンと硫酸摂取の多いこれらの条件では、明らかに血液銅は銅の有効状態を示すものではなかった。何故かと言うと血液銅濃度が正常または高くても、銅欠乏症状が起きたからである。 |
>Mo 量に応じての血液銅の増加2 | ||||
食餌中硫酸塩摂取 | 15mg Mo | 30mg Mo | 60mg Mo | 90mg Mo|
g/d | % | |||
1.5 | 1.4 | 5.2 | 15.3 | 25.3 |
1.8 | 1.1 | 9.0 | 13.5 | 30.3 |
3.1 | 9.7 | 15.3 | 26.1 | 46.1 |
5.7 | 15.6 | 16.7 | 67.1 | 74.1 |
1 Dick(1954)の表 1より | ||||
2 個々のヒツジの4日間の血液銅濃度の平均;初期濃度の平均は8mcg/100ml。 毎日の銅摂取量は10mg。 |