栄養学の考え方を変えさせた実験
The Journal of Nutrition Vol. 127 No. 5 May 1997, pp. 1017S-1053S
Copyright ©1997 by the American Society for Nutritional Sciences
Experiments That Changed Nutritional Thinking
Kenneth J. Carpenter, Alfred E. Harper, and Robert E. Olson
Department of Nutritional Sciences, University of California, Berkeley, CA; University of Wisconsin, Madison, WI; and University of South Florida, Tampa, FL
臓器 | 15N excess | |
g | ||
血清 | 1.67 | |
肝臓 | 0.94 | |
腸管 | 1.49 | |
腎臓 | 1.38 | |
心臓 | 0.89 | |
骨格筋 | 0.31 | |
1 Schoenheimer (1942)より。 摂取したロイシンの100 atom % 15Nより計算。 |
アミノ酸 | 肝臓 | 筋肉 |
g | ||
ロイシン | 7.95 | 1.90 |
グルタミン酸 | 1.85 | 0.89 |
アスパラギン酸 | 1.16 | 0.70 |
アルギニン | 0.89 | 0.25 |
チロシン | 0.50 | 0.20 |
リシン | 0.06 | |
アミド N | 0.78 | 0.51 |
1 Schoenheimer (1942)より。 摂取したロイシンの100 atom % 15N より計算。 |
摂取した二重標識ロイシンの両方の同位体量を測定すると、D/15Nは、摂取時には100:182であったが、屍体では100:108であった。このことは摂取ロイシンの標識窒素の1/3以上がふつうの窒素で置き換えられたことを示していた。このことはアミノ基転位がアミノ酸の重要な反応であることの証明であった。 シェーンハイマーと共同研究者たちはタンパク質の少ない食餌で飼った未成熟ラットに[15N]クエン酸アンモニウムを与えた。この自然ではない食餌によってラットは体重が減少したが、しかし体タンパク質の急速な消失にもかかわらず、食餌のアンモニアから新しいアミノ酸が合成された。グルタミンとアスパラギンのアミド Nは、グルタミン酸のα-アミノ基と同じように15Nが濃縮された。グルタミン酸合成酵素、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ、カルバミル・リン酸合成酵素はアミノ酸へアンモニアを固定する重要な酵素として知られている。アルギニン内の大部分の同位体はアミヂン基にありアルギナーゼで除かれ、オルニチン-尿素サイクルによると、オルニチンには非常に少量しか残らない。 これらの実験で [15N]アンモニアはクレアチンに組み入れられた。これはアルギニンがクレアチンの前駆体であることを示したBorsook and Dubnoffの1941年の研究から想定できた。シェーンハイマーが示したのは[15N]クレアチンからのクレアチニンの生成は29日の間に同位体希釈が起きない自発反応であることであった。クレアチニン生成曲線は身体全体のクレアチンの2%が毎日尿クレアチニンになる(新合成によって置き換えられる)ことであった。このことはまた尿中クレアチニン排泄が一定であることを説明した。これはタンパク質の"外因性代謝" を示すものとしてフォリンが説明していたものであった。 シェーンハイマーたちは、前に論じたフォリンの仮説に正式に反対して次ぎのように述べた:”我々の発見は窒素に2つの型の区別を必要とするどのような理論とも両立することはできない.....排泄された窒素は、食餌性窒素とかなり大量の反応性組織窒素の相互作用に始まる代謝プールの一部と考えるべきであろう” (Schoenheimer et al. 1939)。 要約すると、シェーンハイマーは脂肪とタンパク質代謝について新しい動的なパラダイムを導入して、フォリンその他の静的な観点を置き換えた。事実、主要な身体構成成分が動的な生化学システムであるという考えは、最近になり代謝のすべての様相に拡張されてきている。このシステムには物質輸送、造血、内分泌、サイトカイン活性、さらにはゲノムまでが含まれる。 |
文献 |
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Borsook H., Dubnoff J. W. The formation of glycocyamine in animal tissues. J. Biol. Chem. 1941; 138:389-394 Braunstein A. E., Kritzmann M. G. Über den Ab- und Aufbau von Aminosäuren durch Umaminierung. Enzymologia 1937; 2:129-140 Folin O. A theory of protein metabolism. Am. J. Physiol. 1905; 13:117-138 Krebs H. A., Henseleit K. Untersuchungen über die Harnstoffbildung im Tierkörper. Z. Physiol. Chem. 1932; 210:33-45 McCollum, E. V., Orent-Keiles, E. & Day, H. G. (1939) The Newer Knowledge of Nutrition, 5th ed., pp. 80-82. MacMillan, New York, NY. Schoenheimer, R. (1942) The Dynamic State of Body Constituents. Hafner Publishing, New York, NY. Schoenheimer R., Ratner S., Rittenberg D. Studies in protein metabolism. X. The metabolic activity of body proteins investigated with L(-)leucine containing two isotopes. J. Biol. Chem. 1939; 130:703-732 Schoenheimer R., Rittenberg D. Deuterium as an indicator in the study of intermediary metabolism, VI. Synthesis and destruction of fatty acids in the organism. J. Biol. Chem. 1936; 114:381-396 (訳者 水上茂樹) |