栄養学の考え方を変えさせた実験
The Journal of Nutrition Vol. 127 No. 5 May 1997, pp. 1017S-1053S
Copyright ©1997 by the American Society for Nutritional Sciences
Experiments That Changed Nutritional Thinking
Kenneth J. Carpenter, Alfred E. Harper, and Robert E. Olson
Department of Nutritional Sciences, University of California, Berkeley, CA; University of Wisconsin, Madison, WI; and University of South Florida, Tampa, FL
動物 | 正常 | 欠乏 | 治癒 |
mg/100 mL 血液 | |||
ハト | 3.96 | 11.31 | 5.29 |
ラット | 4.22 | 9.39 | |
1 Thompson and Johnson (1935)より。 それぞれの平均値のうち約2.5 mgはピルビン酸ではない. |
オクスフォードの研究者たちがとくに焦点を当てた発見の意義および動物を使って行われた基礎研究の広範な価値は、ピータースがQueen-Squareの国立病院で行った講演 (Peters 1936) に述べられている。”学んだこと”として次のように要約した。”現状をよく調べてみよう。鳥の脳組織の純粋にin-vitroの研究は最初にビタミンB1の検査として始まり、後にビタミンが協力する酵素を明らかにすることに発展した。これはこの問題を解決するためだけではなく、正常の代謝においてピルビン酸が存在することを証明した。生化学者のin-vitro研究を利用した脳組織のin-vitro研究はin-vivo現象に応用できることが示された。これはこの領域における重要なステップである。研究が脚気患者の血液のピルビン酸検出まで進み、診断学の役に立っていることは心強い。純粋にアカデミックな研究が終局的に実際の役に立っている例として、たしかにこれ以上のものはない”。 ピルビン酸のレベルにおけるビタミンB1と炭水化物の関係が確立されている間に、このビタミンの構造が解明された (Gubler 1991, McCormick 1988)。1932年のWindausによるビタミンB1の正しい経験式は硫黄の存在を認識させ、1936-1937年にWilliamsたちは全構造を決定し、現在チアミンと呼んでいるものを合成した。 ピルビン酸の脱炭酸にビタミンB1の関与することが認識されると、酵母のピルビン酸”カルボキシラーゼ”からアルカリ不安定な”コカルボキシラーゼ”を分離したE. Auhagen (1932)の以前の研究が新たに重要性を持つようになった。ビタミンB1に由来するこの機能を持つ補酵素の構造はLohmann and Schuster (1937)によって解明された。彼らは100kgの酵母から出発してチアミンピロリン酸を単離した。精製の過程は表2に示す。 |
コカルボキシラーゼの単離(100kg酵母→750mgHCl塩) |
1 熱アルコール抽出 |
2 バリウム沈殿と洗浄 |
3 酸性液からエタノール沈殿、メタノール再沈殿 |
4 Frankonit KL吸着、熱希ピリジンで溶出 |
5 メタノール・エタノールで分画沈殿 |
6 ピクロロン酸塩として沈殿 |
7 バリウムおよび銀塩として沈殿 |
8 ホスホタングステン酸で沈殿、塩酸塩として結晶化 |
化学検査 |
元素分析 C12H21O8N4P2SCl |
酸加水分解 ピロリン酸エステル |
亜硫酸分解 ピリミジンとチアゾール |
UV吸収 チアミンモノリン酸と同じ |
生物学的検査 |
ビール酵母、パン酵母よりピルビン酸カルボキシラーゼの再構成 |
1 Lohmann and Schuster (1937)より。 |